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背から抱き包められたまま

背から抱き包められたまま、冬乃は目の前の本をたどたどしく読みあげる。

 

 「よく読めました」

 当然ご褒美は、ぎゅ、で。

 

 難しい箇所をなんとか間違えずに読めば、そうして強く抱きこまれ、時々うなじへの口づけまで降って、冬乃は恍惚と溜息をついて。

 

 (集中できない・・!)

 

 option put 嬉しい悲鳴を内心あげる。

 

 

 それでもまだ先ほどまでの、仕事がほとんど手につかなかった状態よりは、マシなのである。

 

 (仕事中もずっとこうしててもらえたらいいのに)

 近藤の目の前でこれはありえないので、叶わぬ希望でしかないが。

 

 「俺がいない時も」

 

 不意に落とされた言葉に冬乃は、どきりと顔を上げた。

 

 「心のほうが冬乃のそばにいる、」

 

 「そう思ってもらうだけでは にはなりえない?」

 

 まるで。またも冬乃の思考を読まれたかの台詞に、冬乃はおもわず沖田を振り返っていた。

 

 

 (総司・・さん)

 

 きっと、この恋わずらいというものは。肉体のわずらいで。

 片時も離れたくない、そんな魂の希求を

 満たす唯一のすべが、魂が肉体に拘束されるこの世においては、その肉体でのふれあいである以上。避けられないさだめ。 

 

 

 「・・・・」

 何故か沖田が沈黙した。

 

 「・・・??」

 冬乃の見つめる先。

 

 やがて沖田は、ふーっと次には激しい溜息をついた。

 

 「誘ったわけでないなら、あれをどういう意味で言ったの」

 

 「あ・あれ、て・・?」

 「『総司さんのおくすり注いでください』」

 

 

 (え?)

 冬乃は、首を傾げた。

 

 どうしてそれが誘った意味にとられたのか、分からずに。

 

 

 

 

 首を傾げ眉尻を下げて悩んでいる冬乃を沖田は唖然と見つめた。

 

 (この子は)

 

 いったい何度、紛らわしいことを言って沖田を惑わせば気が済むのだ。

 

 (これはもう天性の魔性か何かか)

 

 そう思えばもはや笑い出した沖田を前に、ますます冬乃が困惑した顔になるのへ、

 沖田は仕方なしに手を伸ばし、その戸惑う頬を包んだ。

 

 「俺の薬が、欲しいんでしょ」

 

 「え、はいっ・・!」

 

 「今夜、待っていられる?」

 とたん冬乃の瞳が嬉しそうに輝く。

 「もちろんです・・っ」

 

 「なら巡察から戻ったら、たっぷり注いで あげるよ」

 

 これでもなお分かっていないのか、ひたすら大きな喜色を浮かべて微笑んだ冬乃を。

 沖田は、強く掻き抱いた。

 

 

 

 

 今夜も一緒に居られることになって冬乃は、沖田の腕の中で嬉しすぎて溢れる笑みごと頬を寄せる。

 

 この腕に戻っていられるときだけは、

 想像したとおり、冬乃の胸の苦悶はきれいさっぱり治まって、

 

 只々、幸せで。

 まさに、天にも昇る気持ちで。

 

 (総司さん)

 今こんなにも長く抱き締めていてくれるから、きっと沖田に冬乃の先程の言葉の意味も伝わったのだろう。

 

 冬乃は注がれつづける特効薬 にうっとりと目を瞑った。

 

 

【おしらせ】

 

いつもありがとうございます。

 

このところ色々悩むところがありまして、一番には長編管理の負担軽減と、ほか諸々の事情により、

 

現在はいくつかの小説投稿サイトで連載中なのですが、この後の連載先を一つ二つに絞っていこうと考えがまとまりつつあります。

 

その場合ですが、エブリスタの使い勝手の残念さとモチベーション落としの仕様には、以前より少々涙腺崩壊ぎみでして、候補先からは外させていただくこととなります・・

 

 

今まで皆様からいただいた数々のコメントやたくさんの応援は、時々拝読しなおしては励まされており、大切な宝物ですのでけっして消してしまいたくはないため、この小説自体をごっそりエブリスタから削除するつもりは全くございません。

 

連載先を集約後も、こちらの小説は「エブリスタでの今後の更新予定は無し」等の注意書きを添えた状態で、このまま残させていただきたいと思っております。

 

 

またいろいろ想いが定まりましたら、ご連絡にまいります。

続きを気にしていただける方は(ありがとうございます<涙)集約先にもぜひいらしてくださいませ・・

それまでもうしばらく、こちらでも続けてまいりますので、引き続きおつきあいいただけましたら幸いです

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