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大村益次郎を称する

大村益次郎を称するのに、俊冬は「でこちんの助」と、俊春は「でこぴん野郎」と両者譲らず、この話題になったらきまって熾烈なバトルをくりひろげるのである。

 五兵衛新田にとどまっていたとき、どっちがふさわしいかを新撰組の内部で民主主義的に問うたことがある。おれは、ウィキ等で肖像画をみたことがあるので、どっちがふさわしいかを決めようと思えば決めることができる。が、ウィキは当然のこと、おなじ時代に生きているとはいえ、ずっと敵対している大村とリアルに面識があるわけもない新撰組のメンバーにとっては、なんのこっちゃわからぬのは当然のこと。みな、テキトーにどっちかを選んでいた。

 

 それは兎も角、生髮藥副作用「でこちんの助」にしろ「でこぴん野郎」にしろ、大村を語るのに、どちらもズバリすぎる。どれだけイマジネーションを駆使しようと、それ以外はかんがえようもない。

 ってか、双子にすりこまれてしまっている。

 

 ちなみに、大村は軍師としては優秀かもしれないが、性格は致命的にイタイのである。ゆえに、とくに薩摩藩とは衝突がおおかったらしい。もっとも、長州藩内部でも評判はすこぶる悪いらしいが。

 

 海江田は、ことあるごとに大村とぶつかる。来年、大村は、長州藩の尊王攘夷派である

 半次郎ちゃんも飯やおかずを喰いながら、

 半次郎ちゃんも飯やおかずを喰いながら、を中心とする不満分子らのメンバーに襲撃される。結局、大村はそのときの傷が元で死ぬ。

 

 海江田が、そのメンバーを煽動したという説がある。

 

「いいのか、ぽち?たまにしられたら・・・・・・」

「しられる、ですと?永倉先生、しられることはありますまい。なぜなら、これにいらっしゃるすべての方が、あの愚か者に告げるようなことがないからです」

 

 それは、めっちゃ脅迫めいていて、なおかつ不穏すぎる言葉である。

 はやい話が、「チクるようなことがあれば、ただじゃすまさないぞ」感が半端ない。

 

 ってか、俊春よ。なにゆえ、大村益次郎を表現するのに、いつもこんなにムキになるんだ?

 殺気立ち、なおかつ多重人格者みたいに豹変するんだ?

 

 沈黙が重い。重すぎる。

 

 全員が、唖然としたで俊春をみつめている。「西郷先生と薩摩の方々に、あらためてお尋ね申す。「でこぴん野郎」と「でこちんの助」、いかに?」

 

 俊春は、まるで人類の行く末を審議する神のごとく決然と問う。それから急に、やわらかい笑みを浮かべた。

 

「わたしは、強いですよ」

 

 そのたった一言は、万の大言壮語より威力がある。ってか、めっちゃ脅してる。

 

 だれかが唾を呑み込む音が、やけにおおきくきこえてきた。

 

「「でこぴん野郎」、じゃなあ」

 

 ややあって西郷が答えた。さすがである。

 

「おいどんも、「でこぴん野郎」じゃて思う」

「おいどんも、そいに同意すっ」

「おいどんもそうじゃ」

「「でこぴん野郎」やなあ、半次郎ちゃん?」

 

 つぎからつぎへと、「でこぴん野郎」に票が入る。ってか、入れるしかない。

 最後は別府である。かれにうながされた半次郎ちゃんも、無言でうなずくしかないようである。

 

「心より安堵いたしました。これで、ムダに血を流さずにすみましたな」

 

 俊春は、柔和に微笑む。それはそうであろう。かれの思惑通りにことがすすんでいるのだから。かれは、満足しているにちがいない。

 

「西郷先生、海江田先生にもお伝えください。「でこぴん野郎」と「でこちんの助」ではどちらがふさわしいかを、軍議の間中ご検討願います、と」

 

 俊春はそうシメてから、縁側で叩頭した。

 

 西郷は、はっとしたようだ。

 

「わかった。かならずや伝ゆっ。おいどんも、軍議中にあらためてどちらがふさわしかか、検討してみることにすっ」

 

 海江田にしろ西郷にしろ、軍議の席で大村をまえにし、「でこぴん野郎」か「でこちんの助」か、どっちがよりふさわしいかをかんがえていたら、たとえ大村本人にムチャぶりされてもスルーする余裕ができるかもしれない。

 

 俊春は、それを狙っているのだ。

 おそらくは、であるが。

 

「よかれば、こいを着てよかたもんせ」

 

 篠原と「幕末のプレ〇リー」こと村田が、軍服をもってきてくれた。

 もちろん、コスプレのためのものではない。カモフラージュのためである。

 

「うまくたちまわるつもりだが、万が一ってこともある。そうなりゃ、

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