をしたってかわいくないんだよ」
副長は、おれのキュートなはずの仕種までディスってくるではないか。
ったくもう、どんだけ自分に自信があるっていうんだ? とりあえずは、景色を存分に堪能した。
こんな景色を拝めるなら、日に一度は訪れたいものである。
久吉曰く、顯赫植髮 ここは市村や田村だけでなく、隊士たちの何人かもお気にの場所らしい。
丘をくだりはじめたところ、どこからか声が流れてきた。
「てっちゃーん、銀ちゃーん」
どうやら、子どもの叫び声っぽい。
おれたちの向かう反対の方向から、集団が丘をのぼってくる。
「あっ、とらちゃんたちだ。おーい!」
「ほんとだ。しんちゃんやとよちゃんもいるよ」
途端、子どもらが振り返って掌をふりはじめた。
どうやら、かれらの知り合いらしい。
その集団がちかづくにつれ、嫌な予感がしはじめた。
白い鉢巻に同色の布を左肩から肩襷し、左腕にはなにかを縫い付けているようだ。
上衣は黒い軍服で、ズボンはもんぺスタイルのズボンをはいている。なかには、白い鉢巻と肩襷で着物袴の子もいる。
若松城の方向からきているあの子どもたちは、白虎隊の面々にちがいない。
「どうした?」
むこうがちかづいてくるまでの間、副長がおれの様子に気がついた。
「先日お話しした白虎隊だと思います」
それだけ耳元に告げると、副長の眉間に皺がよった。
副長もおれとおなじ気持ちになっているにちがいない。
「くそったれ!まだ餓鬼ばかりじゃねぇか」
案の定である。副長がかぎりなく小声でささやいた。
白虎隊は、今回の戦のために組織された隊である。たしか、武家の十六歳や十七歳が集められているはずである。なかには、それ以下、十四歳や十五歳も年齢を偽り参加している者もいる。結局、十三歳くらいの年齢の子どもも、幼少組として参加したといわれている。
この戦は、会津にとって藩をあげての大決戦。第二次世界大戦時の日本同様、藩領内の老若男女を問わず、玉砕覚悟の必死の覚悟で臨んでいる。
白虎隊は、当初は大人たちの支援を目的にしていたのであったであろうが、結局は最前線に投入される形になる。
新政府軍の容赦ない猛攻が、そうせざるをえなかったのだ。
結果、隊の一部分は飯森山の悲劇、つまり自刃へとつながってゆく。
もしかすると、いまこのなかにいるだれかが、飯森山で自刃するかもしれない。まだこんな子どもが、である。
そうかんがえると、まともにみていられなくなる。
「これが兼定だよ。昨夜、合流したんだ」
「恰好いいだろう?」
市村と田村は、相棒のことを白虎隊の面々に自慢しまくっているらしい。鼻高々で紹介している。
「うわー!狼みだいだね。磐梯山みだいにおおぎい」
「強そうでねぇだが」
「いいよね。おらの爺様の犬はもっとぢいせえ」
子どもらは、相棒を取り囲んでわいわい騒いでいる。
「若松城を守護されている白虎隊の方々でいらっしゃいます。蟻通先生や隊士の方々が、二、三度刀や鉄砲のつかい方を指南されたのです。その際、市村さんと田村さんはすっかり仲良くなられたようでして。ここで会っては相撲をとったり剣術の稽古をされているようでございます」
子どもらの様子をみながら、久吉が教えてくれた。
子どもらは、すぐに仲良くなれる。うらやましいほどに社交的で順応性がある。
だが、市村や田村がかれらのをしってしまったら……。
いったい、どうなってしまうだろう。
しらせることはなくとも、戦況がいちじるしく悪い状態で会津を去ることになれば、かれらは心を痛めるにちがいない。
想像すると、いろいろな意味で気が滅入ってしまう。
白虎隊の一員であろう子どもらは、かわるがわる相棒をなでたり抱きしめたりして、堪能したようだ。その間、相棒は尻尾をふりふり愛想を振りまき神対応している。
そこでやっと、子どもらがおれたちに気がついたようだ。一人の子がはっとしたように