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レンホーセンは時にハ

レンホーセンは時にハンベエが見せる無愛想さに、妙な誤解を受けなければ良いのだが、と心配する心持ちになっていた。(いや待て、こいつは良く考えたら伯父きリーホーセンの仇じゃないか。俺は仇討ちを諦めたわけじゃないんだ。だが、今はまだ無理だ。とても仇は討てそうに無い。仇を討つのはもっともっと先の事だ。)今度と何時かは絶対来ない。人の良いレンホーセンの心は伯父の仇討ちをいつも先延ばしにしている。キーショウと入れ替わりというわけでも無かろうが、街道を西から馬を走らせてやって来た者がいた。馬は一頭、乗り手は二人。騎馬を操る兵士の背中にしがみつくように乗って来たのは言わずと知れたロキである。「ハンベエエエ。」馬の背から転がるように降りたロキは左右に首廻らせながら呼んだ。「おお、ここだ。」野営地に並ぶ天幕の一つから、ハンベエが顔を出した。コマが原のハンベエ達は太子達の軍とは違い、大規模な陣屋は造っていない。四、五人で満杯の天幕を五メートル間隔で設置して寝泊まりしている。馬は放し飼いである。それでも、online trading platform singapore 傭兵部隊員一人一人が各自愛馬としているので呼べば直ぐに騎馬隊を構成できるのだ。筋金入りの騎馬部隊の強みだ。ロキはハンベエの姿を見ると、駆けて来た。「ハンベエ、一仕事終わったんで、やって来たよお。」「仕事速えな。どこまで出来た。」 と尋ねながら、ロキに見せ付けるように左右を見回し目配せした。 勘の良いロキは、『何処に敵の間者が居るか分からないからな』と言外に含めたものと受け取って、「後は相手を待つだけ。モルフィネスに引き継いだ。」と超短切な返事をした。こんな切れっ端な言い様では、ロキの仕事を知る者以外には何の事やらさっぱり風味のわけワカメ味だろう。「・・・・・・仕事早過ぎ・・・・・・。まあ、天幕の中入って、茶でも飲むか。」改めて驚きの絶句が交じるハンベエの言葉を受けて、さっさと天幕の内にロキは潜り込んだ。 中に入り改めて、額を付き合わせ小声で話す二人である。「何々、それじゃ川の水は今も通常通り流れている形なのか。それじゃ敵は気付きようも無いな。」「凄いだろお。結果的にそうなった面も有るけどお。」「凄い凄い。で、敵に与える打撃はどのくらいが予想される。」「それは相手の出方と、堰を切るタイミングによるけど。敵が川岸に広がって一斉渡河を試みたら、全滅させられるよお。」「モルフィネスなら、敵をそう仕向けられるな。敵勢十二万には気の毒な事だ。」 軽く笑ったハンベエであったが、笑い覚めぬ間に突如慄然となった。(ロキの施した策によって一瞬の内に十二万もの命が消えるのか。)それはハンベエをして空恐ろしいものを感じさせる数字であった。無論、ヒョウホウ者として数多の人の命を奪って来たハンベエに敵への哀憐の情は無い。敵はただ滅ぼすのみである。一人も百万も変わりない。が、この策を企て講じたのはロキである。もし十万余の命が川の泥のように流され、泡(あぶく)のように消えてしまったら、ロキはどう感じるだろう。平気であろうはずがない、途方もない罪悪感に苛まれるに決まっている。今は企てを講じた事の高揚感から何も感じていないであろうが、策通りに敵が全滅した後にロキは己のやった事を振り返るだろう。そうして、その時にロキが受けるであろう索漠たる衝撃に思いが至った時、ハンベエは胸が抉られるような苦しさを覚えた。

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