を見付けたら、直ぐに言ってくれよ。お前の為なら無理を押してでも本懐を遂げさせてやる」
近藤は厳しい顔を緩め、慈しむような視線を沖田へ向けた。随分強引なそれだが、気持ちが嬉しかったため沖田も笑みを返す。
「はは、勇さんは総司には甘いからなァ」
井上がそう言うと、避孕方法 土方と山南は頷いた。それを見た井上は苦笑いを浮かべると、二人の顔をじっと見る。
「いやいや。勇さんだけじゃなくて、あんた達も甘いんだよ」
すると、部屋の中が笑いに包まれた。
穏やかな空気が流れる中、近藤がそういえばと話を切り替える。
「面白い人に会ったんだよ。何と、幕府で奥医師を勤めておられていてね。か」
近藤の発言に、土方は興味を持った様子で顎に手を当てた。
「ああ。御典医と言うだけあって、これがまた世情に明るいんだ」
松本は蘭医学を専門としているため、外国人と関わる機会が人並み以上にある。そのためか、の優秀性を理解しており、それを近藤へ語って聞かせたという。
「みだりに外人を屠るのは浅慮極まりない、絶対に侮ってはいけない。孫子曰く、兵の用は彼を知り己を知るにあり、と言われてしまったよ」
松本は外国の陸海軍の精鋭さ、軍艦や大砲の進歩についてを図で近藤へ懇切丁寧に説明した。
当初は完全攘夷を推していた近藤にとっては目から鱗であった。「あと、俺は胃痛持ちだろう?胃腸薬も処方して頂いたんだ。流石は御典医だよ、よく効いた」
松本も素直で根の良い近藤のことを気に入り、二度目の来訪を許可した。そこで腹の診察を行い、健胃制酸下剤を煎じた。実際に話してみないとその本意は分からないが、近藤が気に入る相手なら信頼に足るだろうと土方は頷く。
伊東は胡散臭いがな、と心の中で悪態を吐いた。
「京に来た時は新撰組に顔を出して下さるそうだよ」
「それは凄い。歳さんも昔病に臥したことがあったろう。見てもらえばいい」
近藤の言葉に井上は感じ入るように笑みを浮かべる。医者嫌いの土方は嫌そうに手を払った。
確かに生死を彷徨ったことがある。だがそれはもう十年以上も前の話だ。
「俺ァもう治ったから良いんだよ。それよか、隊士全員見て貰おうじゃねえか。夏に何人も暑気中りで動けなかったろ、アレじゃあ有事の時に困るぜ」
土方は苦笑いを浮かべながらそう言う。それに井上が深く頷いた。
「池田屋の時だね。あれは確かに酷かったよォ」
「池田屋と言えば、総司が面倒見ると言った白岩だな。結局あれはすぐに脱走しちまった。今度の鈴木桜司郎は逃がさないでくれよ」
沖田はその言葉に瞳を伏せる。雷雨の日に見た夜のことが脳裏に今でも強く残っていた。
あの口振りからすると、白岩誠之助は間違いなく吉田という男の間者だったのだろう。
桜司郎君は、桜花さんは今でも吉田の事を想っているのだろうか。
後追いを選ぼうとしたくらいなのだから、きっとそうなのだろう。
だが、今彼女が選んだのは 。
「…大丈夫ですよ。桜司郎君は、ああ見えて肝がどっしりと座ってますからね。そうだ、今度の隊編成とやらは彼を私の組に入れて下さいよ」