『赤禰さんの前で何て事を!』
久しぶりの口づけを何故赤禰に見せつけてるんだ。これもあんまりじゃないか。三津は桂の胸を叩いて抗議した。
息も絶え絶えになるぐらいの熱い口づけの後に桂は涼し気な目元で赤禰を見た。
「どうぞ報告しておいで。まさかこれ以上の情事を監視するなんて無粋な真似はしないだろ?」
「せっかくだから最後まで見ようかな。」
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「は?三津の乱れた姿を何故貴様などに見せねばならん。帰れ。」
桂は赤禰を睨みつけてシッシッと野良猫を払うように追い払おうとした。
『何で長州の人は変態じみた人ばっかなんやろう……。』
三津は身を捩って桂の腕を解いて膝からひょいと飛び降りた。
「すみませんけど一人にしてもらえませんか?」
今はぼーっとしたい。心がざわざわするから何も考えない時間が欲しい。
「駄目だ。一人は危ない。」
「大丈夫ですよ。ここには私を追い回す人いないですから。ちょっと海眺めたら戻ります。」
波の音がこんなに心を鎮めてくれるとは思わなかった。半刻は見てられそうだ。
三津は海の方を向いてじーっと波を見ていた。するとその横に黙って赤禰が立った。
「黙っちょるけぇおってもいい?」
赤禰もじーっと海を見つめながら問いかけた。三津は少しだけ口角を上げてどうぞと呟いた。
変に対抗意識を燃やした桂も三津の横に並んだ。嫉妬の塊が三津と赤禰を二人きりにする筈がない。
三津は本当に喋る事もなく微動だにせずただ海を眺めていた。桂も赤禰も邪魔をしないよう無言を貫いたが流石に四半刻も無言で立ち続けるのは苦痛だった。
「三津,そろそろ戻らないかい?」
桂が恐る恐る控えめに様子を窺いながら聞いてみた。
「どうぞ先に戻っててください。」
「いや……まだ居よう。」
「肌寒くはないそ?大丈夫?」
赤禰が気遣うと三津は大丈夫とだけ答えた。これは長期戦になるなと桂と赤禰が目で会話したところで天からの助けが来た。
「お三津ちゃーん!」
セツが三津を迎えに来た。
「お三津ちゃん今日は一番風呂入り!潮風で髪もベタベタなっとるけぇ髪も洗い!いいでしょ?桂様。お三津ちゃん遠慮して台所で沸かした湯で体拭くだけやったそ。湯屋にも行けれんし今日ぐらいは。」
「そうでしたか。三津,お言葉に甘えて入っておいで。疲れも幾分か楽になるだろう。」
「そしたらお言葉に甘えて……。」
セツはそうこなくっちゃと忙しなく三津を連れ帰った。「我々も戻ろうか。」
「そうですね。多分三津さんが湯に浸かると聞いたら覗こうとする馬鹿はいるでしょうから追い払わんと。」
二人は急いで屯所に戻り庭先から浴場の小窓がある場所へ回った。
「三津さーん湯加減どうですかー?」
そこには薪を焚べて空気を送り湯加減を調節する入江の姿があった。
「九一……お前何してる?」
「見て分かりませんか?桂さん。妻の為に湯を沸かしてるんですよ。健気な夫でしょ?」
「勝手に夫を名乗るな。」
「勝手じゃないです。みんな公認です。」
真顔で返されて桂は呆れたと溜息をついた。
「それに私達は色々曝け出して補い合ってもう実質夫婦ですよ。でも桂さんは何か隠してる事あるでしょ?例えば……途中で途絶えた文の事とか。」
隙のない笑みでどうでしょう?と首を傾げるこの男を侮ってはいけなかった。
「本当にお前は……したたかな奴だ。四天王に名を連ねるだけあるよ。」
「答えになってませんね。
ですがその内容が三津さんを傷つける物ならくれぐれも知られぬようにお願いしますよ。もし次に彼女を傷つける事があれば貴方の元から連れ去りますからね。」
黙り込む桂を入江は笑顔のまま睨みつけた。何かやましさがあると確信した。
「これが修羅場ってヤツかぁ。」
完全に蚊帳の外にされた赤禰はぽつんと呟いた。