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「恐らくは

「恐らくは。別動隊は陽擢、華雄隊は長社の周りにまで進み、攻略は控えるものと。我等の主力を釘付けにし、その間に胡軫隊が許、潁陰を攻めとるのが想定されます」

 

「こちらが東へ主力を向ければ華雄隊が城を攻略し、胡軫隊は引き下がり牽制に留める、有効な作戦でありましょう」

 

 荀彧と荀攸が続けざまに相手の見通しを述べた。それをされると確かにきつい、援軍はないのだからジリ貧に陥る。戦端を開いたが最後、簡単には敵を引き離せなくなる。雪の到来を待つのも時期ではない、期貨 兵糧も今なら充足しているだろう、持久戦をとられても困るのは潁川側だけだ。

 

「ふむ。荀攸殿、上陸部隊をどのようにするつもりで?」

 

 そこが決まらない事には戦力の運用が定まらない。島介は目を細めて荀攸を見詰めた。

 

「華石津は岩山に囲まれた低地です、そこから南へ林があり、長社北の平地が望めるところ。上陸するならば留まりはしません、林を抜けて来るのは間違いありません。上陸部隊が林へ入った後に退路を塞ぎ、林ごと焼き払います」

 

「蓋をして燃やすか。少なくとも混乱はするだろう、戦闘力を失えばそれで充分だが、準備に時間が掛かりそうだな」

 

 岩山の上に落石の為の罠を設置し、林を燃やす為に油などをまいたりもしなければならない。南側の出口を封鎖するための用意も必要になる。人手も時間もどれだけいるのか。

 

「概ね準備は終わっています。残るは出口の封鎖、兵千は必要とするでしょう」

 

 余裕の笑みを見せられてします。甘寧を見ると「そういえばずっと何かしてた奴らがいたな、そんなことをしていたのかよ」どうやら兵士を使わずにしていたようで、甘寧も詳しくはしらなかった。

 

 島介は腕を組んで考えた。皆がじっと息をのんで待つ。

 

「……将が一人足らんな。孫策、頼めるだろうか?」

 

 名指しされると孫策は一歩進み出て拳礼をし「どうぞ伯符にお任せを!」勝気な笑みを覗かせる。黄蓋も斜め後ろでそれに倣う。

 

「孫策と黄蓋は兵千を率い、井西山関の防衛をして欲しい。万一陥落するようなことがあれば、陽擢へ退くんだ」

 

「御意!」

 

 撤退先を決めておくが実はそれほど心配はしていない、何せ五千が来てもきっと守れると踏んでいるから。純粋な戦闘では孫策の武力よりも黄蓋の経験が役に立つだろうが、二人の関係を鑑みれば全く問題なく協力をすると信じている。

「荀攸殿、兵千を率い上陸部隊の殲滅をお願いしたい。牽招を補佐につけます」

 

「多目の弩弓の配備を宜しいでしょうか」

 

「優先配備させます」

 

 岩山の上から攻撃するのに必要なので、これといったやりとりをせずに満足な数を渡すと確約した。

 

「残りは華雄と戦うが、一戦して後に騎兵は長平方面へ走る。その後華雄の相手は甘寧に任せる」

 

「騎兵が抜けたら守備兵千と残りの正規兵千だけか、かなりきついな」

 

 華雄の兵力は少なくても五千、多ければ七千や八千が居てもおかしくはない。数の情報など大雑把なもので、二倍に膨れ上がっていても文句は言えない。

 

「そいつだが、潁陰から郷土兵二千が到着する予定だ。それも一緒に指揮して遅延をし、最悪長社に籠もってもいいから華雄と戦闘状態を演じるんだ」

 

「潁陰の二千……それなら何とかなるか。そいつらは俺の指揮に従うのか?」

 

 誰もが素直に従うようならば問題の半分は解決してしまう。よそ者に命を預けろというのは酷な話。

 

「それですが、潁陰の兵は友若殿が連れて来るはずですので、心配には及びません」

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