「そもそも、医療事務の子とどうやって仲良くなったの?そこまで接点ないはずだけど……」
「うちの後輩と小泉が同期なんだよ。それで去年うちの部署で開いた飲み会に、後輩が彼女を連れてきたのが話すきっかけだったんじゃないかな」
「……ふーん」
ずいぶん余計なことをしてくれたなと、股票开户 私はその後輩のことを心の中で恨んだ。
「最近いろいろ相談されてたのは事実だけど、本当に七瀬が心配になるようなことは何もないから」
「……」
あの子が甲斐を好きだという噂があると、甲斐に言ってしまいたかった。
でも、噂の真偽も確かめずにそんなこと言えなかった。
それに、もしその噂が本当だとしたら、彼女の気持ちを勝手に私が本人に伝えてしまうことになる。
それは人としてどうなのだろうと思ってしまったのだ。
「……わかった。甲斐の言うこと、信じる」
今ここで、相談されていた内容って何?と問い詰めたら重い女だと思われるだろうか。
本当は凄く気になるけれど、もし問い詰めても甲斐は他人のプライバシーに関わることを簡単には口にしないだろう。
「でも、言ってくれてありがとな」
「え?」
「小泉のこと。七瀬が、俺の知らない所で悩むのは嫌だから」「そもそも、医療事務の子とどうやって仲良くなったの?そこまで接点ないはずだけど……」
「うちの後輩と小泉が同期なんだよ。それで去年うちの部署で開いた飲み会に、後輩が彼女を連れてきたのが話すきっかけだったんじゃないかな」
「……ふーん」
ずいぶん余計なことをしてくれたなと、私はその後輩のことを心の中で恨んだ。
「最近いろいろ相談されてたのは事実だけど、本当に七瀬が心配になるようなことは何もないから」
「……」
あの子が甲斐を好きだという噂があると、甲斐に言ってしまいたかった。
でも、噂の真偽も確かめずにそんなこと言えなかった。
それに、もしその噂が本当だとしたら、彼女の気持ちを勝手に私が本人に伝えてしまうことになる。
それは人としてどうなのだろうと思ってしまったのだ。
「……わかった。甲斐の言うこと、信じる」
今ここで、相談されていた内容って何?と問い詰めたら重い女だと思われるだろうか。
本当は凄く気になるけれど、もし問い詰めても甲斐は他人のプライバシーに関わることを簡単には口にしないだろう。
「でも、言ってくれてありがとな」
「え?」
「小泉のこと。七瀬が、俺の知らない所で悩むのは嫌だから」電話で甲斐の声を聞いていると、無性に会いたくなってしまう。
何も心配いらないからと言って、抱きしめてキスしてほしい。
「こうやって話してると、七瀬に今すぐ会いたくなってきた」
「え……」
「七瀬は違った?」
離れている二人が、今この瞬間に同じことを思っている。
きっとそれは、どんなに小さくても奇跡だと言っていいだろう。
「……私も、会いたいって思ったよ」
電話の奥で、甲斐が嬉しそうに笑う声が聞こえた。
「……ねぇ、甲斐」
「ん?」
今なら、お酒の力を借りて何でも言える気がした。
普段の私なら絶対に避けるような話題も、口に出来る気がしたのだ。
「甲斐は……結婚ってどう思う?」
同級生の結婚式に参列したことで、以前よりも結婚を身近に感じるようになったのかもしれない。
周りの友人たちから結婚はまだしないのかと急かされ、気になり始めたのかもしれない。
甲斐と付き合い始めてから、お互い一度も話題に出さなかった。
実際、甲斐はどう思っているのだろう。
もちろんまだ結婚について何も考えていない可能性はある。
とにかく、どんな意見でもいいから甲斐の本音を聞きたくなった。甲斐から答えが返ってくるまでの間、緊張が走る。
きっとその時間は短いものだったのだろうけれど、私にとってはとても長く感じた。
「七瀬、もしかして今日会った友達とかに今の彼氏との結婚は考えていないのかって聞かれた?」
「え……」
「桜崎とか、平気でお前のこと煽りそうだもんな。でも、そんな周りの言うことなんて気にしなくていいから。俺らは俺らのペースで付き合っていけばいいじゃん」
「あ……うん」
微妙に答えをかわされた気がするのは、私の気のせいだろうか。
「それに、俺は七瀬に結婚願望がないことはちゃんとわかってるから。そんな心配しなくても、急かしたりしないから大丈夫だよ」
「違っ……!そうじゃなくて!」
変な誤解をさせてしまったことに焦った私は、思わず大きな声を出してしまった。
「別に急かされるとか心配してるわけじゃなくて……ただ、甲斐がどう思ってるのか聞きたかっただけなの」
その直後に届いた甲斐の声は、普段の何倍も優しく感じた。
「……俺は、結婚に対して執着はないかな。七瀬と一緒にいられれば、それでいいと思ってるよ」
「……そっか……ありがとう」
歩きながら、私は必死に涙を堪えた。
なぜ泣けてきたのか、わからない。
ただ、私を気遣うような甲斐の優しくて切ない声が、胸の奥に深く染み渡っていった。
友人の結婚式に参列した日から二週間が経ち、私はあの日からずっと結婚について真剣に考えるようになっていた。
自分の親が二度も結婚に失敗しているからか、結婚に対してどうしても良いイメージは持てずにいる。
でも、結婚って最高だよと言う同僚や友人の話を聞いていると、少し心が揺れ動くようになった。
遥希と付き合っていた頃は、結婚に対して興味を持つことさえ出来なかったのに……。
「依織、ちょっと聞いてんの?」
「え?あ、蘭ごめん。ぼーっとしてた」
「あんた最近、ぼんやりし過ぎじゃない?もしかして、あの小悪魔女子に何か言われた?」
「いや、別に何も言われてないよ」
この日は蘭と休憩の時間が被ったため、今は休憩室でランチ中だ。
蘭が言う通称小悪魔女子の小泉さんとは、廊下ですれ違って挨拶することはあっても何か言われたことはない。
でも最近、すれ違うときに異常に見られている気がしているけれど、それを言ったら蘭が騒ぎそうだから言わないことにした。
「まぁ、何も言われてないならいいけど。それより、スマホの画面にメッセージ出てる」
蘭に言われてテーブルの上に置いていたスマホを見ると、甲斐からメッセージが届いていた。