「嫌ですよ面倒臭い。」
この一言で一蹴してそっぽを向いた。
「では一旦誰に向かってそんな口の利き方してるのか考えようか。」
笑顔の圧力をかけるもそんな物吉田に通用する筈もなく。
見兼ねた久坂がまぁまぁと二人の間に割って入った。
「稔麿流石に失礼だ。【生髮藥】一文拆解口服生髮藥副作用丶服食見效需時多久? @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::
桂さん,三津さんがそれだけの思いでお待ちならこいつの相手などせず仕事を片付けた方がいいですよ。これからまたしばらくは忙しくなるのでは?」
「……玄瑞の言う通りだな。」
桂はそれ以上相手にするのは止めて自室へと引き返した。
「玄瑞は桂さんの肩を持つの?」
「別にどっちを贔屓と言う事はない。最終的にどこにどう落ち着くかは三津さん次第だからな。
二人のどちらかに落ち着くとも限らんぞ?」
茶化すように笑う久坂に吉田は余裕の笑みを見せた。
「確かにね。でも俺だって勝算がない訳じゃない。
でも……会えなきゃ意味ないけどな。」
二人きりで会うのは無理に等しくなってしまった。
『多分桂さんが今三津さんに会わせたくないのは左手が治ってないからだろうな。
稔麿には酷だが……桂さんの優しさでもあるからここは堪えてもらおう。』
「そのうち機はあるさ。」
久坂はそう言うだけに止めた。
「とりあえず今は鬼退治に集中したいしね。」
自分だけはお供にしてもらえると吉田は自負していた。
餌を撒かれた鬼は夜な夜な徘徊する。巡察とは別の単独行動。
しかも巡察の範囲外の場所まで足を伸ばす。
市中に潜む監察方からもらった情報も駆使して毎日毎日桂を探す。
毎日毎日探し続けてもう五日ぐらい経ったが一向に桂の足取りが掴めない。
『あの野郎……。餌を撒くだけ撒いといて現れないだと?』
「ふざけんなよ!クソ野郎!!」
土方の怒りが限界を越した。
その頃桂は会合の真っ最中。
「聞きましたぞ。土方の女を攫って手篭めにしたそうじゃないですか。」
「ん?それはデマですよ。以前から懇意にしてたお嬢さんを貰っただけです。
土方君はただ自ら手放す羽目になっただけですよ。」
からから笑って酒を煽った。
「桂さんそろそろ。」
そこへ吉田が迎えに来て桂にそっと耳打ちをした。それに桂は笑みを浮かべた。「ここから西,二本裏の通りに。」
「では……。行こうか。」
暗がりに提灯の灯りが一つ。暗闇に溶け込んだ影が一つ。
「よぉ。やっと見つけたぜ。桂。」
暗闇でもギラつく目は殺気立って口元は弧を描く。
「私はあんまり会いたくはなかったんだが。」
「あ?わざわざ変な噂流して俺が食いつくの待ってたんだろうが。」
桂の脇で提灯を持つ吉田はただ無になり土方を見据えた。
「うちの三津は何処だ。」
うちのと言われ桂の目元が引き攣った。
「さぁ?何の事だか。」
うちのと言われて気に入らない事この上ないが笑みを浮かべて首を傾げた。
「お前が三津連れ去ったのは見てんだよ。アイツの周りを彷徨いてた色男がお前だってのも分かってんだ。」
「おや君に色男と言ってもらえるとは光栄だね。」
余裕の笑みなのがより土方を殺気立たせる。
「はぐらかしてんじゃねぇよ。腹割って話そうや。三津はどうした。」
「散歩をしてたらちょうど前を歩いててね。迷子になっちゃいけないと思って保護したんだよ。
ただ可愛いからね帰したくなくなって手篭めにしてそのまま傍に置いてるよ。」
土方の殺気が二割,三割と増していく。
「あ?戯言はそこまでにしとけや。本当の事吐きやがれ。」
地を這うような低い声で睨みつけようが桂の顔は余裕の笑みのまま。
「お前はいつからアイツに目を付けてた。」
「目を付けてたって言い方は違うな。昨年の夏に出逢ってた。誰よりも先にね。
聞きたい事はそれだけかい?早く帰りたいんだ。彼女を待たせてるからね。」
斎藤の部屋に入るのもいつぶりだろうか。
「斎藤さーん。」
声をかけるとすぐに障子が開いた。
感情の読めない顔で上から下まで万遍なく凝視された。
「どうした。」
「お茶かなと思って。さっき来てたって。」
「あぁ…。」
【頭皮濕疹】如何治療頭皮濕疹及遺傳性的永久脫髮? @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::
何も言わなかったがいいように事が運んだらしく,有り難く三津を部屋に招き入れた。
「ようやくお前とゆっくり喋れる。」
腰を下ろしたと同時にポロッと本音が漏れた。
「私にお話あったんです?」
正面に腰を据えた三津の目を見てこくこく頷いた。
「この間借りた手拭いなんだが…。」
渡すなら今だと小さな棚の小さな引き出しに手を掛けた。
「洗ったのだが汚れが落ちなくてな。だからこれを。」
二枚の手拭いを三津の前に差し出した。
「えっそんなんいいのに!」
予想通りの反応だった。斎藤は首を横に振ってずずいと手拭いを前に押し出した。
「お前に合うものを選んだつもりだ…。気に入らないのなら…仕方ないが…。」
そう告げられて三津は目を丸くして手拭いを手に取った。
「斎藤さんが選んでくれたんですか?」
「あぁ…鈴は厄除けの意味もあると…。」
あの時“奥方様への贈り物ですか?”と聞かれて頷いてしまった事を思い出した。
何故頷いてしまったのか。店主と極力面倒なやり取りをしたくないからだと言い聞かせたけど,心の何処かで偽りでも三津と夫婦であった日が忘れられなかったのだと思う。
「ありがとうございます。勿体無くて使われへんかも。」
三津は大事に胸に抱きしめて笑った。
この笑顔が見れて,斎藤は選んだ甲斐があったと口元を緩めた。
「他の奴らには言うなよ。変な噂立てられるぞ。」
こちらは大歓迎だが三津に迷惑を被るのは御免だ。
三津は大きく頷いて二枚の手拭いを見つめた。
「三津ー!」
折角和んだのに土方の声が響いた。
そんなに叫ばなくてもと思いつつ,それが聞こえて改めて三津がここに居ると思えた。
「はいはい,すぐ行きます…。じゃあおやすみなさい!」
袂に手拭いを隠してからぺこりと頭を下げると,小さな足音を立てて土方の元へ帰った。土方の部屋に戻り,夜なんだから大声で叫ぶとみんなに迷惑だと言ったら拳骨が落ちた。
目の届く所に居ないお前が悪いと。
理不尽だと頬を膨らませた。お茶を出すくらいしか本当に仕事が無い。
「私何でここに来たんですかね?」
「俺に尽くす為だろ。」
「お茶淹れるしかしてない…。」
「居るだけでいい。」
目の届く距離に。この手が触れられる距離に。
本と向き合ってる時と文机と睨み合ってる時はさらっと言える。
さらっと言えてしまうからか相手が三津だからか,さらっと言った言葉はさらっと受け流されてしまう。
『この場合は後者だ…。』
「まさかとは思いますけど寝るのもここ?」
「廊下で寝る気か?」
「私の居た部屋…。」
「物置だ。」
「衝立何処ですか…。」
「さぁな。」
流石に衝立なしで寝るのは抵抗があったが,
“あの日の事朝まで尋問していいのか”との脅し文句に負けた。
ちょっとだけ反抗心を見せて布団と布団の間に微妙な隙間を作っておいた。
警戒心むき出しにしていた三津が眠りに落ちるのは早かった。
その寝息は嫌でも土方の耳に届いた。
『寝たのか?』
静かに起き上がって真っ暗闇に目を凝らす。段々と目が慣れてきたぐらいで,目深に被った布団をそっとずらしてみた。
「おい。」
声には何の反応も示さない。熟睡度合を確認する為に頬を突いてみた。
「んー…。」
悩ましい声を出して一瞬眉を顰めたがすぐに規則正しい寝息を刻んだ。
息を飲んで髪を撫で,それからその手を頬に滑らした。親指を這わせて唇をなぞる。
柔らかなその感触を確認してからもう一度息を飲んだ。
ゆっくりと顔を寄せて,触れるような口づけを落とした。
「んっ…。」
「良かった…落ちた…。」
丁寧に洗った甲斐があった。
点々とついていた血も染みになる前に取れた。
あまりごしごし洗って着物を傷めてしまわずに済んで良かった。
穴なんか開けて弁償だと言われたら,一生タダ働きに違いない。
「汚れは取れたか?」顯赫植髮
「…っ土方さん!」
いつから見られていたのやら。
土方が腕組みをしてこっちを見ている。
「綺麗になりましたよ!」
三津は満面の笑みで着物を広げて見せた。
土方はそれを見て穏やかに笑みを浮かべて頷いた。
「落ちなかったら弁償させようと思ったのにな。残念だ。」
「言うと思いましたよ。でもそんな大金持ち合わせてませんからね!」
さっきまで泣いてたとは思えないぐらい元気で,土方はほっとした。
まだ泣かせてしまった罪悪感が胸にどっかり居座ってた。
「知ってるさ。だからそん時は体で払えよ。」
「なっ!」
三津が耳まで真っ赤にして口をパクパクさせるのを愉しげに眺めてから部屋へ引き返した。
背後で抗議の声がしているが聞こえぬふり。
さっきより気持ちが軽くなった。
『土方さん…もう怒ってないみたい…。』
「良かった…。」
いつもの土方に戻っていて三津もほっと胸を撫で下ろす。
「何が良かったんです?土方さんは三津さんに下品な発言したんですよ?」
今度は総司がすぐ後ろに立っている。
ぷんぷん怒って口を尖らせているから,一連の話は聞かれていたみたいだ。
「そりゃ体では払えへんけど,土方さんの機嫌が直って良かったなって。」
背負ってくれるまでの土方が,どれほど冷たく感じたか。
言葉では言い表せないぐらいの恐怖も感じた。
「でも土方さんがおぶって連れて帰ってくれるの二回目なんよね。また恩が出来てもたわ。」
洗い終えた着物をぎゅっと絞って干しにかかる。
風で揺れる若草色に目を細めた。
「でも土方さんがおぶらなければ,三津さんはここへ来なくて済んだのに…。」
総司の目が悲哀に満ちる。
伸ばされた手はそっと頬に触れた。
「傷…治りましたね。治らなければどうしようかと思いました。」
悪戯っ子の笑顔が今は弱々しい。
『それって…やっぱり私が迷惑って事?みんなの仕事増やしちゃうとか…。』
だんだんとここに居てはいけない気がして,胸が苦しくなった。そう言えば私何の為にここに来てるんだっけ?
それは土方さんにお世話になったお礼に,ここで恩を返す為でしょ?
分かってる。分かってるんやけど役に立ってるかと言えば…自信がない。
「おい…。」
女中としての仕事はバリバリやっている。
料理も美味しいって好評だし…。
「おい…。」
でもここ最近土方さんを怒らせてばっかりだ。
外に出たらいつも刃傷沙汰だし,泣いてばっか。
「はぁーあ…。」
「おいこら三津っ!!」
「はいぃっ!!」
溜め息をついて丸くなった背中がシャキッと伸びた。
「てめぇ,さっきから辛気くさい顔して人の呼びかけにも応えず盛大に溜め息つくとは何事だ?あ?」
「す…すみません…。」
また怒られた。何て駄目なヤツなんだ。
「何考えてた。」
土方の呆れかえった顔により一層駄目な奴と言われてるみたいで辛かった。
「あの…私役に立ってます?」
「それなりにな。そんな風に聞くところ見りゃあお前自身は役に立ってるとは思っちゃいないな?」
バレバレだった。ここまでズバリ言い当てられると何も言えないし,苦笑するほか無い。
「そんな下らない事考えてる暇あったらもっと仕事覚えるか出来る事探せ。」
そうすれば優秀な小姓として,まだ傍に置いておける。誰にも文句も言われずに。
「そ…そうですね,ごもっともです。」
下らない事なんかじゃない。
恩返しに来て足引っ張ってちゃ意味がないんだから。
必要とされなければいる意味がないのに。
「何だよ帰りてぇのか?」
「え?」
土方の真面目な顔が真正面にある。
「そうやないんですけど,居た方がいいんですかね?私…。」
「何が言いたい。はっきり言え。」
鋭く睨まれるのはいつもの事。だけど今日は体がビクビクしてしまう。
「余計な事言いました!ごめんなさい!もう寝ます!」
三津は衝立の後ろに隠れて更に布団の中に逃げ込んだ。
『言うんじゃなかった…。』
ただ迷惑じゃないと言って欲しかっただけなのに。
『何で急にあんな事言いやがる…。やっぱり若旦那となんかあるな。』
居た方がいい?って,まるで自分は居たくないけどここに居ますって言ってるみたいだ。
着物洗ってる時はいつも通りだったじゃないか。
『女って面倒くせぇ…。』
名前で呼ばないでと言うのは,呼ぶのが自分だからだろうか。
『副長以外の男に名を呼ばれるのは好まないのか。』
二人の仲がそんなに深くなっていたとは気付かなかった。
『こいつは副長を深く想ってると言うのに,副長は簡単に任務に使う。
隊の為なら自分の女だろうが容赦ないのか。』
そう考えたら三津が不憫で仕方ない。【生髮藥】一文拆解口服生髮藥副作用丶服食見效需時多久? @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::
「少しの間だけだ。」
慰めにはならないと思いつつ,三津の頭を撫でてみた。
すると三津は笑みを浮かべて頷いた。
「はい,旦那様。」
そう言って笑う三津が健気に思えて,一瞬胸が高鳴った。
それから,斎藤と三津はどこに行くにも一緒。
「散歩に行くぞ。」
診療所に行かない日はこうして散歩に誘われて出掛けて行く。
「今日もいい天気ですね。」
こんな会話をしながら歩く姿は夫婦そのもの。
夫婦ごっこを始めて数日が過ぎて,今やこれを楽しむ三津。
「ねぇ旦那様。」
「何だ?三津。」
このやり取りにも,もう慣れた。
決まった時間に決まった道。
そこを散歩するのが仕事だと斎藤は言う。
そんな中,一部の隊士たちの間で妙な噂が囁かれていた。
「三津さんに赤子?」
「そうなんです。最近よく斎藤先生と出掛けるでしょう?
僕見たんです,二人が町の診療所に入って行くの。
それも頻繁に通ってるんです。」
隊士の話に総司はまさかと笑ったが妙に胸騒ぎがした。
それから徐に立ち上がり駆け出していた。
真相を確かめたいが一心で,二人を捜しに駆け出した。
「あ…。」
捜す手間が省けた。
向こうから仲睦まじく歩いてくるのは噂の二人じゃないか。
「あ,沖田さん!」
無邪気な笑顔はいつも通り。
元気に手を振ってくれるその隣りには寄り添うように斎藤がいる。
総司の胸がちくりと痛む。
笑顔で手を振り返したいのに,上手く笑えない。腕が上がらない。
「お出掛けしてたんですか?」
この一言で精一杯。
こんなにも三津の笑顔を見るのが辛いなんて,自分でも信じられない。
「ただの散歩だ。」
『私は三津さんに聞いたのに…。』
三津じゃなく斎藤が答えて,そのまま三津を連れて部屋に吸い込まれて行った。
それを見届けて,ようやく全てが繋がった。
斎藤が面倒を見ると言った訳。
何故責任を感じたのか。
噂は本当らしい。二人が入って行った部屋からは楽しそうな笑い声が聞こえる。
きっとあんな顔で笑ってるんだろうなって,突っ立ったまま考えていた。
『三津さんがどんどん遠くへ行ってしまう…。
それでも三津さんはいつもと何ら変わりなく接してくれるんだろな。』
三津はいつだってそうだ。
誰とでも親しくなれるんだ。
『その三津さんに特別な人が出来たんだ…。
お腹に赤子だっている。喜んであげなきゃ…。』
だけど,信じられない。と言うか信じたくない。
だって隊士たちが見たと言う現場を,自分は見ていない。
『そうだ。私は見てないんだ。そんな噂だけで信じられない…。』
女中の仕事を終えた三津は斎藤の姿を捜した。
今日はユキに会いに行く日だ。
「参ったな…。」
出掛ける時は声をかけろと言われていたのに斎藤が見つからない。
『一人で出掛けたらマズいやんね…。』
斎藤の居場所を知る人はいないか聞いて回ったが,知る者はおらず困り果ててしまった。
「一人でも大丈夫…かな。」
うん,大丈夫だ。
誰かに診療所へ行ったと伝言を託して出掛ければ問題ない。
三津は一人で診療所に向かった。
「すまん…。…またお前か,大丈夫か。」
三津の顔を覗き込むようにしゃがみ込んだのは斉藤だった。
「すみません,また私です。」
笑いながら鼻をさすりゆっくり立ち上がった。
斉藤も首を捻りながら腰を上げた。https://fundly.com/understanding-endometriosis-causes-symptoms-and-diagnosis
人の気配には敏感だ。
いつもならぶつかるなんてことは有り得ない。
「以後気をつけます!」
三津は頭を下げてから小走りで斉藤の横を通り抜けた。
隊士たちが続々と集う広間で,斉藤は腕を組み一点を見つめて考え込んでいた。
『何故気配がない。』
せっせと配膳に勤しむ三津を目だけで追う。
気配がない所か,ちょこまかと動く姿は嫌でも目に留まる。
たえの後ろを三津がついて回り,三津の後ろを隊士がついて回る。
そんな光景をじっと見つめる。
食事の最中も土方の横に座する三津を,より近くで観察したのだが不思議と気配を感じる事が出来なかった。
そして二度あることは三度ある。
風呂へ向かう斉藤はまたも三津とぶつかった。
「何故だ。」
尻餅をついた三津を見下ろし,謝るよりも先に心の声が口から出た。
また気配を感じなかった。
斉藤は怪訝そうに首を傾げながら三津を引っ張り起こした。
『以後気をつけますとか言っといて,またやっちゃった…。』
落ち着きのない奴と思われてるだろうな。
真っ直ぐ自分を見ている斉藤を見つめ返すと,
「お前生きてるか?」
突拍子もない発言に三津は目を瞬かせた。
突然過ぎて呆然としてしまったが,ちゃんと心臓も動いてるし足も地についてる。
それを確認してからこくりと頷いた。
『何でちょっと考えたんだ?見れば生きてる事ぐらい分かる。』
変わった奴だとふっと笑うと,再び足を進めた。
その途中,今度は総司と出くわした。
当然のごとく総司とぶつかる事はなかった。
「沖田,あの小姓には気配がない。」
出合い頭に真顔で告げられ,総司はきょとんとした。
「小姓?あぁ三津さんですか?」
気配がないって何のことだ?
理解が追いつかず首を傾げていると,
「…何でもない。私の思い過ごしだ。」
溜め息をついて立ち去った。
置いてかれた総司は何の事か気になって仕方がない。
「三津さんに聞いたら分かるかな。」
会いに行く口実が出来た。
嬉々として土方の部屋に行き先を変更した。「三津さーん!ちょっといいですかー?」
部屋を覗くと不機嫌な土方と目が合った。
「あれ?いない。」
「あれ?いない,じゃねぇよ。勝手に入って来るんじゃねぇ。」
舌打ちをして拳を振り上げたが,総司は中に入り込み押し入れを開けたり座布団をめくったりして三津を探した。
「…あいつはいねぇぞ。」
「迷子ですかねぇ…?」
それでも箪笥の引き出しを一つずつ開けて,三津を探す素振りを見せる。
「てめぇ…斬るぞ。」
土方の手が柄に掛かったのを見て冗談ですよと苦笑して部屋を飛び出した。
『非番だから自室に戻ってるのかな?』
そう考えて三津の部屋を訪ねたが戻った気配はない。
総司の脳裏にはあの時の嫌な記憶が蘇る。
『まさかまた…。』
急に不安になり駆け出そうとした時,三津の笑い声がした。
耳を澄まして聞いてみると,どうやら大部屋の方から聞こえて来る。
「三津さん?」
大部屋を覗けば隊士たちに囲まれ,楽しそうな三津がいるではないか。
「こんな所で何してるんですか?行きますよ。」
総司は三津の手を掴むと隊士たちを押しのけて連れ出した。
「どこに行くん?」
『また土方さんが呼んでるんかな?』
三津以上に呆然とする隊士たちに見送られて,黙って総司について行った。
と言うより連れ去られた。
連れて行かれたのは総司の部屋。これは予想外。